一定期間更新がないため広告を表示しています
就労支援センターNESTでの障がい者支援のありかた
- 2014.07.30 Wednesday
- -
- 18:16
- comments(0)
- -
- -
- by cocorone-nest
JUGEMテーマ:軽度発達障害児
就労支援センターNESTでの障がい者支援のありかた
就労支援センターNESTでは日頃より、「より一般就労に近い形態」を意識した訓練作業を行っている。難易度の低い作業から難易度の高い作業まで、様々な種類の作業を経験させることで各種作業とのマッチングを図り、対象者が「どのような分野の作業に向いているか、どのような能力を有するか、またどのような環境で能力を発揮できるか」を注意深く判断している。
障がいの種類や大きさにより、行うことのできる作業の種類や難易度は異なってくるが、最初から「この作業は彼等には無理だろう」、「彼等にもできる仕事(作業)を見つけよう」といった目線で決めつけるのではなく、「どのような環境であったなら、どのような工夫をしたのなら問題をクリアできるか?」、「自発的にやる気を起こさせるためにはどうしたらよいか?」を積極的に考え現場に反映させていくことで、「できないこと が できること」に変化するのである。
隠れている能力を引き出すために
私の以前の職業は家具職人で、その後2年間の海外ボランティア経験を経て現在の職業に就いている。
前職とは、畑違いの現職を選んだ主な理由は、海外ボランティア経験を通じ、人に技術、知識を伝え、その人の成長を見ることができたことに「やりがい」を感じたからである。
現在は職業指導員として、日々利用者と一緒に訓練作業に取り組んでいる。
当然だが、利用者達の作業能力は一定ではなく、得意な作業、不得意な作業(好きな作業、嫌いな作業)があり、訓練作業の円滑化を図るには苦労が絶えない。
納期、品質を守るためには、作業に従事する利用者の能力向上は欠かせない。そのためには、作業分解し一つ一つの作業動作の単純化を図る、専用治具を製作して難易度を下げる(誰でも作業可能なように)、人員配置を工夫する(得意な作業分野から練習させ成功体験をあたえる)、写真付きのわかりやすい作業指図書を作成するなど様々な工夫をするのだが、最も重要なのは支援に就く職員が可能な限り多くの時間(工数)、その作業動作を事前に行うことだと感じる。実際に作業を経験することで見えない部分が見えてくるものであるし、我々職員が作業をスムースにできない場合には彼等を納得させられないからである。
今回は上記のような取り組みから利用者の隠れていた能力を上手に引きだすことができた例を紹介します。
30代男性、重度判定されている知的障害を持つ自閉症の利用者。性格は真面目で几帳面であるが、妄想癖や強いこだわりが見られ、嫌いなことに対しては強い拒否を表すこともある方です。
施設外就労訓練作業の一つとして、自動車部品のスポット溶接を行っている。作業内容は、穴の開いた名刺大のスチールプレートに専用ボルトを挿しこみ、スポット溶接機で溶接するといった作業。
当初は溶接機から飛ぶスパッタ(火花)を怖がり、溶接作業を嫌がることもあったが、次第に作業に慣れ真面目な性格も手伝って、順調に作業工数を伸ばすことができた。
が、2〜3ヶ月程経過すると、今までの作業手順(作業動作)では限界が見えはじめ、それぞれの利用者の一日の作業工数が頭打ちになり、目立った作業工数の伸びが見られなくなった。
そこで更なる作業工数の向上を目指すために作業手順(作業動作)の改善を模索。納期厳守の目的もあるが、私自身も一日2,000、3,000と溶接作業を行ってみる。
溶接作業の流れは次の通りで、
1:前作業でプレートにボルトを挿入した部品を取る
2:溶接機にセット
3:両手で其々左右スイッチを同時に押して溶接機を作動させる
4:溶接後の完成品をプラコンテナに入れる。
といった内容で左から右へ流れて行く作業。
利用者の作業動作と私の作業動作の違いを探すと一目瞭然であった。
彼らは利き手である右手を主に使い、左手を上手に使えていない状況だった。
左から右へ流れる作業にもかかわらず、
1:右手で部品を掴む
2:右手で溶接機へセット
3:両手で其々左右スイッチを同時に押して溶接機を作動させる
4:完成品を右手でプラコンテナへ入れる。
1−2−3−4のリズムでの作業になっており、左手を使用しているのは左側スイッチを押すときのみ。
対して私の動作は
1:左手で部品を取る
2:左手で溶接機にセット
3:両手で其々左右スイッチを同時に押して溶接機を作動させる
4:完成品を右手でプラコンテナへ入れる、と同時に左手で次の部品を掴む。これを連続すると、1、4を同時に行うことができ、1−2−3のリズムで作業を行えるようになる。
単純な改善動作ではあるが、この作業を始めてから時間が経過しているので1−2−3−4の動作が身についていること、左右の手で同時に別動作を行うことは混乱し難しいと見え、ギクシャクとしてスムースな動作はできなかった。
が、まずはゆっくりと、速度を気にせず1−2−3のリズムが身に付くように毎日繰り返し練習させる。1週間程経過すると、徐々にスムースな作業動作ができるようになり、時折見られた「間違って右手で部品を取る動作」は見られなくなった。1か月程経過するころには作業動作は身に付き1−2−3のリズムを守りテンポアップしていることを実感できるまでに向上。
3ヶ月程経過すると、一日の作業工数が、改善前は5000〜6500個だったのに対し、改善後は8000〜9000個、段取り次第では10000個を超えるようになり、明らかな作業工数の向上が見られるようになった。
先に紹介した利用者の作業工数変化は、当初、平均700個/h程度だったものが、平均1300個/h、良い時で1500個/hまで作業能力を伸ばすことに成功している。作業者の中では随一である。
彼の作業を見ていると自信を持って作業に向かっている様子を感じ取ることができる。
障がい者の作業支援に携わる上で感じること
今日、医学的に分類されているそれぞれの障がい特性に対しての基礎知識を有し支援に当たることは当然だと感じるが、実際に私が現場で行っている支援の基本は、以前部下を持っていた頃と何も変わらず、まず相手を理解して信頼関係を構築し、こちらの説明に対して、「何が理解できて、何を理解できていないか」を注意深く判断することで、次に行わなければならない支援が見えてくるものだと感じている。
職人時代、部下の仕事の飲み込みの悪さを上司に愚痴った時に言われた言葉があります。
「部下の飲み込みが悪いということは、お前の教え方が悪いと考えろ。人前でそういう発言をすることは、お前の能力が低いことを周囲に伝えているだけだ」と。
目から鱗でした、その頃は若く、そういった逆転の発想は全く持ち合わせていなかったので胸に突き刺さる一言でした。
現在は、自分のものさしだけで物事を判断するのではなく、相手の立場に立ち、客観的に広い視野で判断し、相手の個性に合わせた支援を行い、内に秘めた能力を引き出せるよう日々の支援に就いている。
このように、「障がい者=保護する」という今日までの一般的な考えではなく、障がい者を一人の社会人としてとらえ、彼等自身でできることは能動的に行ってもらい、「働く楽しさ」、「自らの力で賃金を得る尊さ」を実感してもらい、「自立心(私にもできる)を構築する」取り組みこそが、就労支援センターNESTの目標としている取組であり、これからの障がい者支援のありかたとなってゆくべきではないかと、日々の支援を通じて感じている。
30.Jul.2014 職業指導員 URUSHIBATA
想像力
- 2014.07.22 Tuesday
- 日常
- 18:53
- comments(0)
- -
- -
- by cocorone-nest
JUGEMテーマ:軽度発達障害児
障がい者就労支援にあたるものにとって、また職員に必要なのは |
想像力です。 |
その人をどうしてあげたいか・・・ |
どこでその人の力が戦力になるのか日々の訓練作業の中で |
良いところ探しをすることに想像力は欠かせないのではないでしょうか。 |
想像力はスタートを 点 として、実現に向けての行動を 線 として |
点と線を結び途切れることなく終わらせないで現実にしていく。 |
その想像力をもって支援していくことの原動力は職員のスピリッツに |
あるのではないかと思います。 |
NESTでは作業配置についた職員が支援において気が付いたことを |
職員日報に書き記述しています。 |
その職員の仮説や想像力、言い換えれば洞察力で描いていきます。 |
事実+想像力=真実、一つの事例やケースであっても |
職員が10人いたら10通りの物の見方もあるかもしれません。 |
困難なケースであればこそ、あの手この手と100あるケースのうち |
1つでも成功すれば良しとして、少々極端な言い方かも知れませんが |
それくらい成功は稀少。 |
あとの99はたとえ失敗事例でも、それをそれを尊い経験値として |
スキルにしていく為の努力をすべきだと思います。 |
失敗は成功の元になると思います。 |
このようにしてレクチャーの方法を見極めていけばよいと思います。 |
まだまだそれだけではありません |
良いところを見つけて伸ばしていくだけでなく |
課題があれば課題に対してどのように支援すれば |
「できる」に変えることができるのかも探っていきます。 |
「この方は、○○○○○のようにしたら、できますよ」と |
できないことが、できるに変えられるように治具や手順の示し方など |
探っていきます。 |
課題があるのは誰にでも同じことですが |
NESTは良いとこ探しとできること探しで課題を課題にせず |
得意を探し仕事を通じた取り組みで日々支援しています。 『花咲かせ隊』土屋 |
- PR
- selected entries
-
- 就労支援センターNESTでの障がい者支援のありかた (07/30)
- 想像力 (07/22)
- archives
-
- June 2019 (2)
- May 2019 (2)
- March 2019 (3)
- February 2019 (4)
- January 2019 (4)
- December 2018 (4)
- November 2018 (5)
- October 2018 (4)
- September 2018 (2)
- August 2018 (3)
- July 2018 (5)
- June 2018 (5)
- May 2018 (4)
- April 2018 (4)
- March 2018 (5)
- February 2018 (3)
- January 2018 (3)
- December 2017 (4)
- November 2017 (4)
- October 2017 (6)
- September 2017 (6)
- August 2017 (3)
- July 2017 (5)
- June 2017 (5)
- May 2017 (3)
- April 2017 (5)
- March 2017 (4)
- February 2017 (5)
- January 2017 (4)
- December 2016 (3)
- November 2016 (5)
- October 2016 (4)
- September 2016 (3)
- August 2016 (2)
- July 2016 (17)
- June 2016 (19)
- May 2016 (8)
- April 2016 (4)
- March 2016 (6)
- February 2016 (5)
- January 2016 (5)
- December 2015 (3)
- November 2015 (3)
- October 2015 (4)
- September 2015 (2)
- August 2015 (2)
- July 2015 (1)
- June 2015 (2)
- May 2015 (3)
- April 2015 (2)
- March 2015 (3)
- February 2015 (1)
- January 2015 (2)
- December 2014 (3)
- November 2014 (5)
- October 2014 (9)
- September 2014 (3)
- August 2014 (3)
- July 2014 (2)
- June 2014 (1)
- May 2014 (4)
- April 2014 (3)
- March 2014 (5)
- February 2014 (4)
- January 2014 (4)
- December 2013 (5)
- November 2013 (2)
- October 2013 (8)
- September 2013 (6)
- August 2013 (7)
- July 2013 (10)
- June 2013 (9)
- May 2013 (4)
- April 2013 (4)
- March 2013 (6)
- February 2013 (6)
- January 2013 (5)
- December 2012 (9)
- November 2012 (7)
- October 2012 (1)
- recent comment
-
- ポリティカル・コレクトネス
⇒ 鈴見咲 君高 (02/28) - 障がい者の雇用と定着率
⇒ 自画自賛 (06/10) - 特別支援学校先進事例
⇒ 黒岩 剛 (03/18) - −信頼と共感−
⇒ 通行人 (03/05) - ショウガイシャ
⇒ ojisann (02/27) - ショウガイシャ
⇒ ojisann (02/27) - ショウガイシャ
⇒ ojisann (02/27) - 我が家のNEST
⇒ おじさん (02/07) - 社内研修レポート
⇒ N.N (06/05) - 平成25年度 自閉症支援講座を受講して(第1回目)
⇒ N.N (06/05)
- ポリティカル・コレクトネス
- recommend
- profile
- search this site.
- mobile