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    • 2019.06.21 Friday
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    レポート「居場所」

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        NEST(ココロネ)に入社して11月が過ぎました。後半月ほどで1年になります。
       その間に継続支援B型ができ、施設の名称もココロネからNESTに変わりました。

       10月・11月には富士・富士宮それぞれで合同面接会があり、それをきっかけに巣立つ利用者もいます。



       しかし、障がい者を迎える会社では、実際の現場の指導者がどのように接していいか、どこまで叱っていいのか、実習時に相談されることが何度もあるそうです。
       知識で知っているつもりのものと、実体験を伴う感覚はやはり違います。
       私も最初に指導していた頃はどこまで教えていいのか、どのような言い方をしたらいいのか、毎回恐々としていた記憶があります。
       障がいを持った子どものために分離教育があるのは必要なことだと思いますが、健常者と障がい者が接する機会が極端に減ってしまっている現代社会の生活は不自然な形だったのだと考えるようになりました。
       私自身、この職につくまで障がい者に接する機会はほとんどありませんでした。
       正直、障がい者を健常者より出来ない人だと思っていた面もありました。
       ですが、NESTに出会い、その中で働くうちに考えが変わりました。

       人間誰しもできること、できないことがあります。
       得意不得意の中、多くの人が何かしら得意とする部分を生かし、働いているものです。
       例え、たくさんの人ができることしかできなくても、その部分をその人が担うことで他の人が別のことができ、全員でできることがより広がっていくことになります。
       足らない部分をそれぞれが補い合う相互扶助と適材適所の考えが、社会にもっと浸透していってくれればと思います。
       ただ、そのためにも、企業の構造改善により生じてくる事業を早期に見出し、それらの事業に対応した貢献ができる職業人となれるような、種々の作業実習訓練や社会生活訓練の場を提供していく就労支援事業所の一員でありたいと思います。

       生活支援員として、訓練そのもの以外にも生活習慣の意識付けや改善を促す指導を行っています。
       見落とされがちですが、就労を継続していくためには生活習慣も疎かにはできない事項なのです。
       企業の中で、最初から生活面まで手をかけなければならないとなれば大きな負担となりますが、逆にそこはクリアできている、何らかのフォローが講じられているという人材は戦力にしやすい存在となりえるのです。



       就労継続支援B型も含めて、NESTは羽ばたきの場です。
       NESTにではなく、自らの可能性を生かし地域社会に自分の居場所を作り、充実した日々を送れるようになるよう、努めていきたいと思います。

                                                                                               中村              

      「大不況が教えてくれたこと〜障がい者と歩んだ25年〜」

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        はじめに

         

         私の会社は特別な優良企業ではなく、経営戦略に長けているわけでもありません。加えて、私は24時間365日不安や葛藤と闘っている無学無能な経営者であり、不況の際などは「もうやめるしかないかもしれない」などと家族の前でつぶやき、「軽々しくそんなことをいって、ご先祖様に申し訳ないと思わないの!」と妻に一喝されるくらい、お粗末な経営者のはしくれです。

         しかしながら、こんな私にできたことだからこそ、多くの経営者の皆様の参考になるのかもしれないと思い、幾たびの危機を乗り越え、現在まで事業を続けてこられた経緯を、これからお話しようと思います。

         この世でいちばんの宝はひととの出会いである、という言葉がありますが、私の生涯の宝は、今もともに働いている障がい者のひとたちとの出会いです。今の私と会社があるのは、すべて彼らのおかげであることを、はじめにお伝えしておきます。

         


                 

         

        リーマンショックを乗り越えて

         

         私の工場に特別支援学校から何名かの生徒さんが実習に来たときのことです。その中のひとりの生徒さんが昼休みに私にこう語りかけてきました。

        「社長さんって大変なんですね。社長さんは座っているだけでいいのかと思っていました」。

         その日は給料日だったので、私は給料袋をテーブルに広げていました。

        「従業員のひとたちのお給料も準備しなければならないし、仕事も取ってこなくてはならない。向かいにあるような大企業(王子キノクロス)ならともかく、こんな小さな工場はとても持ちこたえられないですよね、リーマンショックはこれからですからね」と親指を下に向けたグーの形の手を大きく上下に振りながら「本当に大変ですね〜」と、ダメ出しのようなオマケまでもらいました。彼との会話に癒されながら、私はさらに「ビジネスのことをどうしてそんなによく知っているの」と尋ねてみました。すると彼は「テレビのニュースで観た」といいました。

         そこで愚かな経営者である私はハッとしました。誰もが知っている経営の基本が脳裏をよぎったのです。経営者が何よりも優先すべきは「雇用を守る」こと。自分はこんな当たり前のことを忘れていたのではないか、工場を大きくすることばかりに目を向けていたのではないか。我が身をしかと振り返り、考えを巡らせました。

         そもそも「雇用を守る」とは、会社がつぶれないこと、倒産しないことが大前提です。いくら雇用を維持していても、倒産してしまえば「守る」ことはできないのです。そうならないために行うべきは、会社の債務縮小、蓄財です。ひとを雇用するという責任は、1年や2年仕事がなくても給料を払い続けることができるくらいの資力や覚悟を持って初めて果たせることなのだと改めて気付きました。

         目標に向かって努力したり、大きな夢を持つのはとても素晴らしいことだと思います。しかし、会社はもちろん、個人も自治体も、貯蓄を置き去りにしてそうした輝かしい方向にばかり目を向けていては、本末転倒になりかねません。理想に金銭を注ぎ込むより、基礎的な貯蓄を心掛けることの方が大切です。ISOやインフラ整備が大事だと改善にお金を掛ける前に、貯蓄を優先しなくては会社は成り立たないのです。

         先ほどの彼の言葉通り、私の会社が受けたリーマンショックでの打撃は予想以上のものでした。どう考えても本当に「もちこたえられない」ような状態でした。全国各社の雇用調整や派遣切りのニュースが毎日のように新聞紙面を賑わせ、私も同様に社員の雇用継続を考えると、眠れぬ夜が続きました。

         幸いセーフティネットという緊急避難的対策と新規受注の回復とを併せて危機を脱することができたのですが、新規受注が叶ったのは障がい者の社員たちの働きがあったからです。

         彼らと日々を過ごしていると「これは奇跡だ!」とつい思ってしまうシーンにしばしば出会います。つい、というのは、彼らの素直さ、実直さ、真面目さなど特性を考えれば奇跡ではなく、成して当然だからです。当社のサッカー部を例に挙げても、ドリブルができないところからスタートして、半年後に県大会で準優勝するなど、彼らがいかに物事に真摯に取り組む人間であるかがわかります。事業のどん底期での新規受注は、彼らが徹底した管理体制を一貫して守り、クライアント企業が求める製品を完璧かつ確実に量産できることを実証してくれたからです。

         また、不況時に繊細な彼らに「仕事がなくなるかもしれない」という不安を与えたくないと、健常者社員とともに懸命に知恵を絞り、打開策を講じたことも、現在当社が誇る、全体精鋭的な合同力につながっていると思います。しかし、それも当社に多くの障がい者社員が存在するからこそで、健常者だけだったらどうなっていたかわかりません。

         今後の事業展開も障がい者たちとともに歩んでいるからこそ成り立つものばかりです。そのやり甲斐の大きさ、ひととひとがつながることの豊かさを思うと、胸が躍り、仕事への活力がわいてきます。

         このように、私の会社はいろんな意味で障がい者とともにあります。彼らが金銭のためのみならず、「居場所」だと思ってくれているこの会社は、彼らの居場所であることがそのまま存在理由であり、私の居場所でもあります。私の存在を証明するものともいえるでしょう。ひたむきな努力、真の信頼関係、純粋な働く喜びなど、彼らのおかげで人生における尊いものがたくさん根差したこの会社を、私はもっともっと大事にしなければならない、と感じています。

                                                                


                                           
         

        家業のあらまし

         

         私が経営するフジ化学は、現在富士宮市小泉にあり、自動車部品のメッキ処理が主たる業務です。

         昭和41年に祖父が創業し、父が2代目、私は3代目。創業時の社屋は廃校になり、払い下げになった校舎をリサイクルして造ったもので、メッキ処理加工はすべて手作業で行われていました。

         私は父が亡くなった翌年に高校を卒業し、会社を継ぐべく入社しました。最初の10年間は徒弟制度さながらのスタイルで、あたかも親方や職人頭のような先輩社員から、メッキの技能について体で教え込まれました。この10年は私にとって、メッキという仕事と、その業界についての基礎知識を固めるための貴重な時期だったと思っています。先輩の中には熟練した技能の持ち主である聴覚障がい者もいました。

         長年財務を取り仕切っていた祖父から、一切の経営を任されたのが29歳のときです。当時は先代が雇用した知的障がい者1名、聴覚障がい者1名、計2名しか障がい者社員はいませんでした。

         それから25年。この間に私が取り組んだものは「障がい者雇用である」と断言してもいいくらいです。障がい者を雇用することで様々な経験や実践をさせてもらいました。障がい者のひとたちにも多くの訓練や体験をしてもらいましたが、それは私にとっても多くの気付きや学びの機会でした。

         

         

        手作業から自動化に進む過程で学んだこと

         

         創業時から手作業で行っていた業務をオートメーション化するため、昭和63年に富士市天間に工場を新築しました。

         業界では15〜20年遅れを取ったオートメーション化でしたが、全自動メッキ装置の導入により、生産能力は拡大し、自動車部品の受注が主となりました。メッキ自体はメッキライン装置がやってくれるわけですが、その前後のプロセスは人手に頼ります。そこを大まかに説明すると、ライン投入前の部品を治具へ吊す引っかけ作業、ラインから送り出された後の処理済み部品の検品、不良品回収作業が人手での仕事です。ここは未だにロボット化が困難で、しかも1個あたりの単価が低い一次処理業種ですから、オートメーション化したときからこの作業をいかに合理的、効率的に行うかが大きな課題のひとつでした。

         もうひとつの課題は、生産能力の大幅アップにより、結果としてそれまでの受注量では半日で仕事が終わってしまうことでした。そこで、当社に出入りしていたメッキ資材業者の仲介で、浜松にある先輩同業者の応援的な仕事を受けることにしました。  

         ここに現在へつながる、新たな障がい者雇用との出会いがあったのです。

         浜松のその会社は、障がい者雇用についてとても参考になる取り組みをしていました。私の常識をはるかに超えたその光景を初めて見たとき「このような仕事のやり方があったなんて!」と大変驚きました。

         そこでは大勢の知的障がい者が、現場で十分な戦力として活躍していたのです。私は「これだ!」と何か大きな力で背中を押されたような気がしました。

         それまでも障がい者と一緒に働いていましたから、障がい者が働くこと自体に驚きはありませんでしたが、その人数、活躍ぶりに私は圧倒されました。20人、またはそれ以上のまとまった人数でラインに就き、作業をしていたのです。その様子を観察し、戦力としての有効性はすぐに見て取れました。

                                                                                            

          

        障がい者雇用はひとづくり

         

         障がい者と深く関わるならばと、静岡県立富士見学園の岩城園長(当時)を紹介していただきました。当時はバブルの真っ只中で企業は人材確保に必死。就職活動は売り手市場でしたが、障がい者にとっては相変わらずの就職氷河期であり、「石にかじりついてでも頑張るから使って欲しい!」という障がい者とその保護者がいることを、そのとき初めて知りました。それと同時に障がい者を雇用する場合、本人はもちろん、受け入れる側、預ける側(保護者)もそれぞれ覚悟が要るということも教わりました。何が起きるか想像がつかないため、どんなことが起きようが「どうしてくれるんだ」や「連れて帰る」といった文句はお互いにいわないこと、採用する前にそういう覚悟を保護者にもきちんと確認するよう、アドバイスをいただきました。

         ここまで来ればあとは実践あるのみです。メッキライン前後の手作業は「知的障がい者が絶対にマッチする」と私は直感し、富士見学園生の実習をスタートすることにしました。

         人選の際には広き門にしたいと思い、第一条件を「毎日出社すること」にしました。そして、出社することに楽しみと喜びに感じ、毎日意気揚々と通って欲しいと願いました。そのため、出社するのが嫌にならないように、私は何があっても怒らないと決めたのです。

         出社すると同時にひたすら泣き続けているひとがいても、怒らず、諭さず。一に辛抱、二に辛抱、三、四がなくて五に辛抱で、泣き止むのをとにかく辛抱強く待ちました。言葉よりも待つことで「ありのままのあなたでいていい。ここはあなたの居場所です」と伝えた方が、心に届くと思ったのです。その彼は、半年後に泣き止み、みるみる仕事を覚え、働く意味や喜びも自ずから見出し、現在では当社に欠かせない戦力となっています。辛抱の先には「障がい者雇用とはひとづくりである」という光明が待っていました。

         浜松の先輩同業者や富士見学園園長のアドバイスを受けて始めた障がい者雇用ですが、スタートしてしまったらこのように自分なりに取り組んでいくしかありません。

         這えば立て、立てば歩めの親心ではないですが、じっくりと一人ひとりの様子を見ていて、「このひとには、こういうとき、本気で叱らなければいけない」というようなこともわかってきました。決して感情まかせに怒るのではなく、強く注意を促すために大きな声を出すのです。何事においても「ここだけはしっかり理解して欲しい」というポイントがあるものですが、私の工場では危険予知と安全確認に関する作業がそれに当たります。安全に関することは「一生懸命仕事をしていたから、つい確認がおろそかになった」では済まされません。普段から口を酸っぱくして伝えていても、十分浸透していない思われるときは、もっと強く注意を促す方法を取る必要があるのです。

         また、当社は一次加工工程の業種ですから、処理を請け負った部品はすべて顧客からの預かり品です。どんなに忙しくても預かり品を粗雑に扱ったり、管理を怠ることは許されません。「お金になる仕事のもと」という認識を徹底的させることで、預かり品を大事に扱う習慣を定着させました。

         安全に関すること、預かり品の扱い方については健常者、障がい者の隔てなく、しっかり教育・訓練をするようにしています。

         

         

        障がい者をメインにした業務改革

         

         平成8年頃になって障がい者関連機関とのコンタクトが重なるにつれ、多様な考え方や情報を得られるようになり、今後の障がい者就労のあり方について、新たな疑問や今まで思ってもみなかった観点があることを知りました。例えば、障がい者を雇用することで受給できる公的助成や、軽減される公的負担。当社が該当するものは素直に活用させていただくことにしました。しかし、このときはバブル経済崩壊後の眠れる10年の真っ只中でしたから、製造業の末端に位置する業種としては、加工単価は下がっても、上がることはまずありません。公的な助成策は大変ありがたいことですが、それだけで財務上の安定が得られるわけでもありません。

         障がい者雇用を会社運営の柱のひとつと決めた以上、障がい者社員を正規従事者として第一線に組み込みつつ、コスト低減を図ることが至上命題で、この大命題に真正面から取り組むことにしました。

         もともと単価が低い部品の、表面処理が当社の仕事です。顧客が納得できる単価でなければ受注もできません。大企業のように積算したコストに利益分を乗せて単価を決定するシステムなら、その中で何かしら削れる部分を見つけてディスカウントをすることも可能かもしれませんが、当社のような立場ではそれもあり得ません。

         赤字を出さないためには、高度な理由付けよりも障がい者社員たちが分担するに見合った仕事の組み立て方にすることで効率を引き出すしかないわけです。

         企業では雇用と人事を外部委託するケースがあります。しかし、障がい者雇用においてアウトソーシングはあり得ず、自社でひとを育て、能力を養っていくしかないのです。

         じつは、それで良いと私は思っています。ひとを育成しなくなった企業が長く存続できるとは思えません。当社のような中小企業においては、ひとこそが唯一無二の資源です。「ひとを育てることで自社を強くしていこう」と私は考えました。障がい者ができること、できるようになるであろうことをライン化し、常に適材適所を念頭に置いて業務改善を図りました。

         

         

        障がい者社員に支えられた生産性の向上

         

         平成13年頃、障がい者社員たちの活躍がピークを迎え、工場が手狭に感じられるよになりました。さらに、富士特別支援学校を始めとする教育機関やハローワーク等から、障がい者の実習、採用の要望が続いていたこともあり、新工場の計画を立案しました。自己資金のみでは困難であったため、いくつかの関係機関へ相談させていただいたところ、当時の障害者雇用促進協会から助成を受けることができ、平成15年に現在の工場を立ち上げることができました。

         広き門で迎え、去る者は追わず、という従来の雇用スタイルから、継続雇用に力を入れ始めたのはこの頃からです。

         また、それまでキックオフの時期を見計らっていたISOは、新工場始動の翌年に認証を取得しました。ISOの基準に業務のすべてを整備し直した結果、従来から取り組んできた5S活動やトレーサビリティ重視の工程管理にもさらに磨きが掛かり、組織としての機能がよく働くようになりました。

         製造工場に出入りしているひとならご存知かと思いますが、どの事業所でも至るところに手順やマニュアルを表示して、打ち合わせごとに再確認を繰り返すようにしていても、なかなか目標を達成できないのが5S活動です。ローマ字表記すると頭文字がいずれもSである整理、整頓、清掃、清潔、躾を徹底させることで、社内美化、社員のモラル向上、業務の効率化、不具合の未然防止、作業の安全性向上などを図り、結果として人的、時間的、コスト的といった社内のあらゆるムダを省くことができるのです。

         当社においてはマニュアルの表示はもちろんのこと、私の機関銃のような注意の連呼に、障がい者を中心とする社員のみんなが実直に耳を傾け、対応してくれています。この素直で実直な反復こそが、来社されたお客様のほとんどに「いつ来てもきれいですね!」と驚かれる所以です。外部評価では高得点をいただいていますが、自己評価ではまだまだ。現在はやっと60点くらいでしょうか。

         私がきれいな工場にこだわる理由のひとつは、天間工場を新築してまもなくの苦い経験があるからです。メッキ工場ですから酸を使用する関係上、錆びやすい環境ではあるものの、築1年も経たないうちに鉄骨の柱や部材が錆び始め、ドアや壁には油汚れが蔓延。そうなってからでは手遅れでした。日を追うごとにボロボロになっていき、築3年で手の付けようがないほど無惨な状態になってしまったのです。このときに「最初が肝心」いうことを身にしみて感じました。

         現在の工場を新築したときは、「何としてでも最初のきれいな状態を保とう!」と固く心に決めていました。メンテナンスの面だけではなく、5S活動の一環として社員教育にも役立つからです。

         工場の経営者である私が「見た目の美しさが大事である」というと、首をかしげる方もいらっしゃるかもしれません。かくいう私も家庭では決してきれい好きではありません。しかし、工場設備がいかに整備されているかは日々の業務を効率的に行う上で重要なことです。特に当社のように障がい者をメインに据えた工場では、ここに生産性を左右するカギがあると確信しています。

         一分の隙もない伝統的な日本の行儀作法も「見た目の美しさ」から始まり、完成されたとされています。私は「見た目の美しさ」と細かなルール、マナーに基づく「振る舞いの美しさ」を両輪として、健常者も障がい者も隔てることなく教育するようにしています。振る舞いの美しさとは、ムダのない理にかなった動作です。これが習慣になれば、まず危険性が減ります。そして、働く姿が美しくなるのです。

         美しいと感じる工場・働く姿であれば、業務の成果は後から自ずとついてくる、というのが私の実感です。

         こうした社員教育は躾です。当社においては躾を通じて云々というレベルではなく、障がい者雇用そのものが躾といえるでしょう。先に「障がい者雇用はひとづくり」といいましたが、言い換えれば、私は躾がメインの工場づくりをしているわけです。躾は教える側がいくら頑張っても、相手に実直さがなければ決して身に付きません。何事も躾に始まり躾に終わる、とよくいわれる通り、躾を真正面から受け止めることができる実直な人間は、どの分野でも活躍できると思います。その点からも、当社の障がい者社員はみんな優秀です。言い訳が先に立つ者はおらず、芯から素直に受け止めてくれます。

         5Sを徹底させる秘策として、私はまず、障がい者社員に実践してもらうための教育資料や手順書を作成しました。それをもとに、週替わりで具体的なプログラムを用意し、毎日の朝礼で彼らに実践してもらいました。素直で真面目な彼らは1週間で1つのプログラムを確実にマスターし、翌週、翌々週と次々に新しいプログラムをこなしていき、やがて5Sのルールをきちんと身に付けてくれました。これを最初から見ていた健常者社員は「彼らがやっているのだから、私もやらなければ!」「私たちもしっかりやろう!」と5Sに取り組み始め、良い連鎖が広がっていきました。一般的に考えると、社内活動は健常者社員が先に立って牽引するのが普通かもしれません。しかし、躾の効果は健常者より障がい者の方が上です。分け隔てなく考えればこそ、このように逆からの取り組みも見えてきます。当社においては障がい者が牽引役となって成果を上げるケースは、珍しいことではありません。

         成果は習慣によって生み出されます。習慣は実践によって身に付きます。そうした積み重ねで今日があります。

         私は今日も美しい工場に感謝、美しい働く姿に感謝の思いでいっぱいです。

         
                                                                
                                                                

         

         

        「私の夢〜障がい者と歩む未来〜」

         

        障がい者の安定就労を基本とした事業展開・農業の事業化

         

         約25年に及ぶ障がい者雇用を振り返り、改めて未来を見つめると、事業規模よりも、景気に左右されない自立可能な事業を多方面に展開することの方が、雇用面においても事業面においてもリスクヘッジとして望ましく、急務であると捉えています。

         バラックのような工場から、ギリギリのスペース、ギリギリの設備で最初の工場を新築したとき、「10年後にはもっと大きい工場を造るぞ!」と強く思いました。それは15年後に実現できたのですが、またしても同じ思いが込み上げてきました。ところが、リーマンショックを経験してその拡大路線は変わり、現状の生産能力を妥当としつつ、さらに雇用の安定継続を守るために、何らかのリスクヘッジあるいはセーフティーネットの必要性を痛感しました。

         当社の社員の半数は障がい者です。リーマンショック以降、福祉的機能を抱えたまま事業を継続するのが困難になったことから、障がい者社員の失業を回避できるセーフティーネットを改めて整備し、福祉サービス施設として法人の設立を行いました。

         しかし、こうして仕組みを整えても、収益を確保できる見通しがなければ、結局は事業として成り立ちません。これまでのように自動車の生産台数に左右される需要だけでは、今後末永く雇用を守ることはできないと思います。

         そこで、不況などの景気に一喜一憂することなく、雇用不安や就職不安を抱くことなく、安定した就労環境の形として、今注目しているもののひとつが、収益性のある農業の事業化です。

         農業は最大のエコ産業であり、食糧自給率の低い日本の今後を左右する大事な産業です。農業の担い手育成は久しく国家的な課題でもあります。農業の中には生活必需品的な作物も多く、経済変動が直ちに受注の増減に影響する製造工場と違い、農園や野菜工場は努力次第で経営を安定軌道に乗せることができます。

         農業生産、販売経路等の基盤を福祉サービス事業につなげていけるように改革していき、それによって障がい者の就労を支援していくという考えは、私にとっていわば必然の流れのように心の中で膨らんでいきました。

         職業訓練の場としても農業は最適です。露地栽培でいえば開墾、土造り、うね造り、種まき、肥料、草取り、水やり、収穫等々、季節や作物の成長に合わせ、それぞれの作業にタイミング、スピードが求められるので、仕事の原点の多くを体得できることでしょう。また、収穫という仕事の完成に向かって、いつ、何を、どのくらい、どのようにといった、質的、量的な加減を計算、確認しながらものを作るプロセスを学んでおけば、たとえ他の分野に就労することになった場合でも、この経験がいろんな面で活きてくると思います。

         収益性を考えた場合、販路の見通しから入るのが農業経営の鉄則とされています。言い換えれば、種をまく前にお客様を見つけておいて、収穫時期と単価・数量を決めた上で作付けを行うということです。

         第二次産業の製品と農業における生鮮作物との決定的な違いは、仕掛品としてストックしておくことや、在庫品として倉庫に待機させておくことができない点です。そのため、どんな作物をどれだけ生産するか、品種の選定、時期、そして市場の選択が死活問題となってきます。

         これらのことをすべて照らし合わせて総合的に考えると、マーケティングの開発と、マーケティングを活かすことができる農業技術の蓄積があれば、就労を希望する障がいを持った若者たちの永続的な受け皿ができることでしょう。

         その第一歩を私は踏み出そうと思います。経営効率の良い事業体(農業生産法人)を設立するべきか否か、また、露地栽培だけでなく、製造業で培ったノウハウを応用できる可能性がある野菜工場、溶液栽培、産直の受託栽培をいかに研究開発していくか、まずはこの課題を整理し、中・長期計画に着手したいと思います。

         製造工場と農園。一見まったく異なる両翼になりますが、障がい者雇用という共通点で有機的につながり、それぞれで得たものをフィードバックし合いながら、互いにブラッシュアップを図っていけるのではないか、と考えています。




                        


        就労支援センターNEST
        就労移行
        就労継続A型
        就労継続B型
        http://www.nest-cocorone.com/
        fax 0544-21-9071
        418-0022
        静岡県富士宮市小泉413−2
        tel 0544-21-9000 0544-21-9099
        ココロネ株式会社
        代表取締役社長 遠藤一秀
        e.kazuhide@cocorone.co.jp
         

          「障がい者の就労を支援する職員について」

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          これまで私たちは普段何気なく「知恵遅れ」という言葉を使い、そのひとが何をしてもそのせいにしてきました。そんなレッテルがなければ、そのひとは生きていくために、もっと多くのことを学べたかもしれません。そう思うと、言葉の怖さに愕然とします。

           知的障がい者は何もできない、のではありません。健常者と同じように、学べば学ぶほど成長します。私たちの就労支援施設は「どのような方法で、いかに成長を促すか」というところからスタートしました。

           障がい者も自分の人生を歩むためには、仕事が必要です。地域の産業や求人状況、彼らの特性などを考え合わせると、工場勤務が適していると思います。そこで、実際に工賃を得られる工場作業を通して仕事力の向上を図る就労支援を行うことにしました。



           職員には作業を介して利用者の成長(社会性、人間関係の構築、仕事に関する能力の向上等)に積極的に関わってもらいます。

           利用者にとっては毎日の生活リズムをこわさないで生活することがとても大切です。新しい職員には、かつてのバブル崩壊後の一時期、仕事が減ったせいで生活リズムが変化したとき、利用者がどのくらい不安な状態に陥ったかをきちんと説明し、そうならないためにはどうしたらいいかを考えてもらいます。

           このように、本人の業務以前に障がい者のことを考えた仕事への取り組み姿勢を強要しても、職員から不平が出ないのは、逆説的ではありますが、大半の職員が福祉関係の専門知識を特に持っていないことが幸いしているのでは、と思います。障がい者を取り巻く環境は、彼らの成長をあまり信じていない公的福祉が柱にあり、福祉を学ぶほど、生涯守ってあげることの方に一生懸命になりがちだからです。

           職員たちは「障がい者とは…」といったそもそも論で対応するのではなく、目の前にいるひとりの大人、というように普通に受け入れてくれています。

          「障がい者といっても、繰り返し何度もトライすれば大抵の作業はできます!」

          「ここをカバーする治具を用意してあげれば、この利用者さんはもっと上手に早く作業ができると思います」

           職員のこうした言葉がうれしくてなりません。

           ただ、工賃に関しては、もう少し職員に頑張って欲しいと思います。今は職員が利用者の能力を何となく判断して、納得がいく程度の水準を作ってしまっているので、現状を上回ることが難しくなっています。もっともっと貪欲に利用者の能力アップを図って、自分の給料もアップさせよう、くらいの気持ちで取り組んでもらいたいです。量的なことにしろ、作業内容にしろ「できる、できない」を判断するのはあくまでも利用者です。職員は何ひとつ自分の価値観で判断してはならないのです。

          「障がい者の成長を信じる」

           これだけで世の中はがらりと変わります。

           職員たちと力を合わせ、こうした成熟した社会を創っていきたいと思います。

                                                                                                                                           

                                                                               

           

          就労支援センターNEST
          就労移行
          就労継続A型
          就労継続B型
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          fax 0544-21-9071
          418-0022
          静岡県富士宮市小泉413−2
          tel 0544-21-9000 0544-21-9099
          ココロネ株式会社
          代表取締役社長 遠藤一秀
          e.kazuhide@cocorone.co.jp







          <レポート>基調報告より

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          《 「フジ化学」と「NEST」のつながり・絆 》
          「フジ化学」においての障がい者雇用は進化を続けている。
          そして、その延長線上に「ココロネ」が誕生し、「NEST」へ進化した。今後においても
          「NEST」は進化していくと思う。
          社長が築き上げたNESTの障がい者雇用の考え方、ある意味思想はとどまることの
          ない「人づくり」であるからだと感じます。
          人は簡単に「人づくり」と口に出しがちですが、進化継続の根拠として、フジ化学で
          体得した職人気質から始まる。
          障がい者と同じ目線で、自分が一生懸命に仕事に打ち込むとすると、障がい者は
          その全てを見ている。言葉という発信がなくても、いつの間にか障がい者は体得
          している、仕事に打ち込む姿勢が障がい者に反映される。
          そこが「人づくり」に直結しているのだと思う。
          「人を育てること」を最も大事なポイントとして掲げ、自社の強みとして障がい者を
          市場参入の戦力として捉え、企業として生き残るために当たり前のように業務改善、
          コスト低減、効率化をすすめ、健常者と同じ位置で「適材適所」を念頭において
          取り組んでいます。
          よって、「人づくり」が成功したことにより、持続性と生産性において障がい者が
          守備位置に責任感を持つまでになったのだと思います。
          障がい者がフジ化学の一員として仕事を始める = 「人づくり」のスタートとなる。
          やがては戦力となって市場参入の歯車のひとつとして動き始める。
          ただで動くわけでなく、雇用という「絆」が障がい者に、自覚・自信・責任感を自然な
          形で芽生えさせている。
          「NEST」の障がい者は、一般就労を目指し日々訓練に打ち込んでいる、そして、
          障がい者は支援員・指導員を見ている。「人づくり」においての第一線での位置
          付けとしては足らないものがあるが、ハングリー精神において一般就労への意識
          付けの責任は重いものがあると思う。
          社会の一部に残る障害者感・・・ 可能性を摘み取り、はじめから合った働く場所が
          ないなどの先入観、それは、勝手に考え、思い込んでいるものであり、自分たちが
          その様に思ってはいけないという「フジ化学」の方針があるからだと思います。
          「NEST」の利用者は、毎日フジ化学の工場を見ながら訓練ブースへ歩いていきます。
          つるしのラインが規則正しく動くたびに発する「音」、人の声がしない職場の緊張感を
          意識なく耳でとらえて歩いていきます。
          一般就労への訓練として、つるし訓練の実習を経験した利用者は、そこで何かを
          感じ、体得してくるものだと確信しています。
          「フジ化学」と「NEST」はつながり、進化を続けていくのだと思います。

          5.JPG

          《 「5S的活動」が発するもの・取り組み 》
          「フジ化学」では、教訓として「5S活動」を推進しています。
          失敗は成功の元ともいえる経験が生かされています。
          それは、戒めであると思います、同じ失敗を繰り返さない、これも当たり前のこと
          だと思うのですが、繰り返さないためには、日々の努力が必要であること、努力の
          積み重ねが今のフジ化学に表われているのだと感じています。
          自分自身、初めて工場案内を受けた際、案内役は社長でしたが、緊張して後ろを
          ついて回った各ブースの「見た目のキレイさ」・「振舞いの美しさ」はすぐに感じとる
          ことができました。
          教訓が示すもの「5S」・・・全員参加の清潔保持と美しさの維持・躾は、細かい
          ルール・マナーに基づき、健常者も障がい者も隔てることのない同じ目線と
          社員教育にあると思います。
          現在の「NEST」では、5S的活動には取り組んでいるものの、足りないものがあると
          思います。
          それは、私自身にも言えることですが「「何もわかっていない」、5Sという、整理・
          整頓・清潔・清掃・躾は、言葉が並んでいて、それぞれの意味は理解できています、
          が、本当の5S的活動は理解できていなかったということです。
          何のために5S的活動があるのか・・・  核心がブレていては方針に近づくことが
          できなかった私が今あるということは当然のことだと思いました。
           
          「躾に始まり、躾に終わる」 障がい者を主とする工場の生産性が、ここから発せ
          られており、そして、利益が生み出されている、会社が存続している現実は
          疑うものではないと思います。
          本来の「5S的活動」が発するものをキャッチし、日々5S目線で取り組むことにより、
          自分に足りないものを少しずつ補充していくことが大切だと思いました。



          CIMG1151.JPG
                                             『花咲かせ隊 土屋』
          就労支援センターNEST

          〒418-0022
          静岡県富士宮市小泉413−2
           


          朝礼の効果

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          JUGEMテーマ:軽度発達障害児

          フジ化学では毎日8時20分と10時20分から朝礼を行っています。
          8時20分からの朝礼参加のA型利用者は17時25分までの作業となり、
          10時20分からの朝礼参加のA型利用者、フジ化学社員は19時30分までの作業となりますが、作業多忙時は作業終了まで残業しています。

           さて、フジ化学の朝礼は合同参加するNEST利用者がローテーションで朝礼当番になり朝礼を進めていきます。
          朝礼は、2人1組になっての身だしなみのチェックと忘れ物の確認から始まり、フジ化学のルールやマナー等の朝礼資料の読み合わせを行い、
          職員がひとこと発言します。
          これは、自分自身を振り返り自分への戒めの言葉として皆の前で発表することにより⇒職員の意識改革⇒利用者の意識改革につなげる事を狙いとしています。
          そして、最後に社長やフジ化学社員、NEST職員から利用者に対して連絡事項を伝えます。
          連絡事項では前日の作業で気になった事、良かった事、悪かった事等伝えます。
          しかし、利用者に対して毎日新しい事を伝えても全て覚える事は大変です。
          そこで、重要な事は毎日繰り返して伝え、毎日繰り返す事で利用者の意識を高めていきます。

          最近の社長からの重要な連絡事項は[仕事中はおしゃべり禁止]です。
          フジ化学ではおしゃべりについては
          1 「おしゃべりはミスのもと」・・・おしゃべりをしていると、大事な話を聞き洩らしたり、聞き間違えたりして、正しく伝わらずに失敗したり、間違えたりしてしまうので、おしゃべりはしない

          2 「おしゃべりはトラブルのもと」・・・おしゃべりで、人間関係について、これっぽっちの事や些細なことを言ってしまうと、その言葉が他のひとに伝わる時、誤解を生み大きな問題に発展してしまう事があるのでおしゃべりはしない。
          伝えたいことがある時は、おしゃべりではなく、社長や職員へキチンと報告・相談をすること
          この2点がルール付けされています。

          朝礼時に連絡として伝える時は、仕事中におしゃべりをすると
          1、指示が聞こえなかったり聴き洩らす
          2、聞き間違え、聞きおとしをして集中力低下やミスを起こす
          3、他の利用者とのトラブル( 誤解)の元

          主に上記に挙げた理由の為おしゃべりは禁止と伝えています。
          毎日伝えていると利用者に変化が出てきました。
          仕事中のおしゃべりがほとんどなくなってきたと同時に、確実に利用者のおしゃべりに対する意識は高まっています。
          朝礼は連絡事項を伝える場としてとても重要な時間になっています。
          そして、朝礼の一番の役割は作業に入る前に利用者に緊張感を持たせる事です。
          緊張感を持って仕事に取り組まなければ、良い仕事が出来る訳がなく、ミスや事故や怪我なども起こります。

          朝礼で緊張感を持たせる為に、朝礼のきまりがあります。
          ・ 利用者はラインに沿ってきちんと一列に整列する。
          ・ 資料は必ず両手で持ち、資料の読み合わせは大きな声を出す。
          ・ 朝礼に遅刻してしまった時は、利用者の列に割り込み横入りすることは禁止し、NEST職員フジ化  
          学社員の横に並ぶ。
          ・ 連絡事項を聞く時は、話す人の方を向き、話す人の目を見る。
             この事を徹底する事で緊張感と活力のある朝礼を行っています。

                 


          今までは朝礼開始間際に来た利用者は、整列している所に割り込んで、職員がいくら注意しても何食わぬ顔をして参加していましたが、
          この様な状況を打破出来ないで悩んでいた時に社長から
          「朝礼に遅刻してしまった時は、利用者の列にねじりこみ横入りすることは禁止し、NEST職員・フジ化学社員の横に並ぶというルール決めはあるのかい?」とアドバイスを頂きました。
          その効果はすぐに表れ、
          朝礼開始時間間際に出勤していた利用者は朝礼開始時間前には整列し、朝礼に参加する様になりました。
          ルールとして決められていなかった為、いくら注意しても利用者には伝わらなかったと初めて気付きました。
          朝礼は利用者だけではなく、自分を含め職員にも変化が表れました。朝礼に参加し発言する事により、利用者に伝えた事や自分に対して戒めた事を強く意識する様になり良い緊張感を保ちながら作業に取組むようになりました。
                                                                                                                   小田宜彦

          就労支援センターNEST

          〒418-0022
          静岡県富士宮市小泉413−2
           

          続:進路学習会に参加して

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            先般投稿させていただいた記事の後編となります。

           既存の福祉施設の中には、就労準備が整っているにも関わらず、利用者様を施設に留められている施設がございます。
          『変化点』に弱い利用者様達を新しい環境に送りだすことに躊躇されたり、ご本人やご家族が留まる事を望むケースもあるでしょう。理由や事情は様々だと思います。
          ところが、施設側の理由・・・仕事ができる利用者様がいなくなる事で、施設で請け負っている作業が間に合わなくなってしまうという理由で利用者様の囲い込みを実施している施設の実態を目の当たりにして、社長は愕然としました。『福祉アレルギー』発症の一因であります。

           NESTにおいては、就労移行支援はもとより、就労継続B型の利用者様においても、一般就労の準備が整えばNESTから羽ばたいていただくように支援させていただいております。これを以って
          『滞留型の施設から循環型のセンターへ』と銘打ったわけであります。

           
           また、先般の記事にも掲げましたが、NESTにおいては現在、富士・富士宮の企業様より1500社の企業様に対してDMを発送させていただいております。ところが、未だ何のレスポンスもありません。
          企業様のお考えの中に、障害者は能力が無いと思われる向きがあるのではないでしょうか。だとすればそれは、大きなお考え違いであります。
           現在NESTにおいては様々なお仕事を企業様から請け負わせていただいており、それを訓練メニューとして利用者様達に提供させていただいております。
          中には健常の職員以上の作業能力を発揮される方もいらっしゃいます。
          また、『誰にでも分かり易く』をかなえる事により、潜在能力を引き出す事ができ、企業様にとって戦力となり得る利用者様が沢山おります。
          NESTのみに限らず、そういった意味においては、正にこの圏域は多くの優秀な人材の宝庫ではないでしょうか。
           障害者の雇用がなかなか進まない原因を、障害者には働く能力がないとすりかえられてしまっているようで残念でなりません。

           今年の富士市及び富士宮市における障害者就職面接会においては、初めて障害者雇用に取り組まれようとしておられる企業様の参加がありました。
          そんな中、幸いな事にNESTの利用者様の中に、そういった企業様に雇用を前提とした実習の機会を頂戴できた方がおられます。
          NESTのような福祉施設を始め、圏域には障害者雇用に関して多岐に渡るご質問や不安に思われている事に対応可能な様々な社会資源がございます。今回の上記企業様に対しても、NESTでは圏域の諸機関と連携して、企業様の素晴らしい取組が成功されるように、利用者様の継続就労が叶いますように、誠心誠意支援させていただく所存です。

           どうか、このような企業様が一社でも増えます事を願って止みません。

                                                                上野

            
          就労支援センターNEST

          〒418-0022
          静岡県富士宮市小泉413−2

          障害者の就労支援は社会的な雇用問題

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            障害者の就労支援が福祉として職員へ投影されると、
           当然として福祉的な取り組みとなる。
           労働として組み立てることを考え、雇用の場を創出することで、
           障害者の福祉的就労の課題は解決すると思う。

           障害者就労の括りに、雇用契約ありと雇用契約なしのふたつがある。
           雇用契約とは労働基準法に定められたとおりの契約だが、
           雇用契約なしとは、労働基準法の適用外ということになる。

           そこに問題が残されていると思う。
           労働問題とは、社会的な雇用問題とも言える。
           その一方、労働基準法適応外の雇用契約なしの所謂福祉的就労とは、
           何の問題と言えるだろうか?

           雇用対策においては障害者対策といい、
           労働問題についても福祉の問題としてしているが、
           障害者の労働問題の解決のためには、
           もっと雇用対策として捉えてみることが必要ではないだろうか?

           障害者は働けないとか、仕事をする能力がないのではなく、
           働く職場がないという問題を、障害者の能力に問題があると定義付けて、
           障害者の福祉問題と捉えているのが現状である。

           厚生労働省の管轄の中で、
           障害者雇用や障害者福祉として担当部署などの課が幾つかあるが、
           そこでの業務分担について、今一度根底から考え直す必要があると思う。

           雇用対策を障害者の福祉対策として扱う仕組み自体に
           課題を内包したままの法律を、見直す必要があるのではないだろうか。

           福祉的就労であろうと、
           労働基準法を適応した枠組みの中で組み立てない限り、
           福祉施設として福祉的就労に関わる施設の職員では、
           障害者の成長や、能力や工賃アップを実現することは難しいだろう。

           政府が本気で障害者の工賃アップを考えるならば、
           障害者就労対策を福祉の枠組みから外して、
           福祉的就労を含めて労働問題として
           雇用対策という括りに置き換える必要があると思う。

           政府の考えや厚生労働省の方針、
           また障害者総合支援法の骨子・指針等は、
           施設職員に投影され、施設職員の考えは利用者へと投影されていく。

           最初から「仕事は無理だから」と雇用ではない仕事で伸ばそうと思って取り組み、
           利用者もそれでいいと思ってしまっている結果が、
           伸び代がないのだと言われていることを知ってほしいと思う。
           仕事さえあれば、役割は見つかるのだということを知ってほしい。

           故に、雇用の創出が、障害者にとっても、健常者にとっても
           等しく重要な先決問題であると捉え、国会で取り組んでほしいと思う。

                                               遠藤一秀


          就労支援センターNEST
          〒418-0022
          静岡県富士宮市小泉413−2 


          NESTの常識 ≠ 固定概念

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          JUGEMテーマ:軽度発達障害児
           
          NESTでは、外部から受注した仕事を下請け製造する訓練作業があります。
          その際、指導する職員たちは、どうすれば作業しやすいか、作業動線・効率を考えます。
           
          複雑な工程では利用者にとって理解するまでが大変で混乱もするので、いかにシンプルに手順を分解するか、それだけを考えています。そうして検討した結果、誰にでも解り易い作業手順書へ工程が落とし込まれます。
           
          手順書へ工程を落とし込む際には、安全性や、ミスしやすい注意ポイント、また利用者の苦手な工程を発見して、工程や手順方法を変更したり、入れ替えたり、工程に係る所要時間等、実際に指導員が作業して検討を重ねます。
           
          そうやって作成したものでも利用者に配布、説明してさあ実際にやってみましょう、と取りかかっても、うまくできない利用者さんもいます。
           
           
          社長に相談したところ、「その手順書をみせてごらん」と。私達としては、十分に噛み砕いた内容の手順書だと思って、いわば自信作を出したつもりでした。でも、社長は「この手順書は施設職員側の自己満足だよ」と一言・・・数秒見て、「写真の目線がバラバラ。俯瞰(ふかん)であったり、職員視点であったり、これでは、かえって利用者にとって解りずらく混乱する。全てに番号を入れないとね。全員が上から下に順序良く見るとは限らないよ。」というように指摘は単純明快でした。
          指摘されたことは私達にとっても非常に良い勉強の機会となり、早速、改訂版を作成し、作業現場に配布しました。
           
          つい近頃にあった話ですが、一部でしょうが他の施設で、指導する職員でさえも工程を理解しておらず手順書の整備もなく、納期や品質に対する意識が薄いということが恒常化しているらしく、NESTにアウトソースしていただいた業者さんから、「納期守ってくれてありがとう。納期と品質について安心してお願いできます。」と感謝されました。
           
          この言葉は、とても考えさせられました。
           
          NESTでは当たり前の【納期厳守】【手順書】【NG流出対策】が、いかに他所ではできていないか、またその状況に慣れているのか、施設だから、これくらいで仕方ないよね、といった諦めに似た甘えがのこっているか。 
           
          一般企業以上のクオリティをとことん追求するというのはともかく、少なくとも、可能性のある利用者達を、勝手に指導する職員側でこのくらいと値踏みして、ここまででいいだろうとその先へチャレンジさせない、そんな傾向が既得権のようにも感じる・・そんな意識が根強く幅を利かせているのだろうか・・
           
           
          納期が守れないなら、職員がその分やる、こういう事はある程度は必要だと思いますが、それでも【納期を守れない】【仕事を断る】施設もあります。
           
          NESTも発足当初はそういった傾向もありました、しかし、社長が【職員が利用者の能力を決めてしまわず、利用者の能率を上げる為の工程・ツールの工夫をして、利用者の能力を引き出すことが使命】ということを繰り返し私達職員に訴えていくうちに、職員間にも、やればできるという自信がつき、こういった私達の取り組み態度を見てか、中には「納期大丈夫ですか?」といった質問をしてくる利用者もでてきました。
           
          当たり前のことを当たり前にやる、こんなシンプルなことですが、奥が深いと感じました。

                                        赤池 

          富士市特別支援教育研究部 進路学習会に参加して

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          JUGEMテーマ:軽度発達障害児
           
           昨日(12/7)富士市大渕の富士教育会館で開催された富士市特別支援教育部様主催の進路学習会に、社長と共に講師として参加させていただきました。

           富士市小・中学校特別支援学級の担任の先生方や、特別支援学級生徒様、保護者様計約100名が参加された学習会でありました。
          二つのブースに分かれて、NESTは片側のブースにて前半50分間のお時間を頂戴し、お話をさせていただきました。
          パワーポイント資料を使用しての講演となりました。
          ※内容につきましては、NESTホームページの『資料』欄に掲載してありますので、是非御覧下さい。

           ご清聴下さった皆様は、それぞれにメモを録られたりお配りした資料を確認して下さったりで、学習会に対する熱い思いを感じ、私の講演?にも熱が入りました。
          今回お持ちした資料は、NESTの取り組みについて社長と共に、職員の意識・支援の在り方について集中的に取り上げさせていただいた内容でありました。下に概要を記させていただきます。

           20年以上障害者雇用に取り組んできた、有限会社フジ化学代表取締役の遠藤社長は、その取り組みの中で、障害を持たれた方においても、人としての成長をかなえる為には『就労』を軸とした取り組みが最適であると常に感じておりました。
          しかしながらそのような確固たる思いの中、既存の福祉施設の現状について残念な思いを感じておりました。
          仕事ができる利用者さんが、施設が請け負った、若しくは自主作業をこなす為にて囲い込まれていたり、『変化点』に弱い利用者さん達に対して、施設内に留まる事で安定する事に重きをおいているのではないかという現状に対してです。

           障害者就労支援施設(当時:ココロネ 現:就労支援センターNEST)を立ち上げた遠藤社長は、電機神奈川の土師様と出会いました。その出会いにおいて、『企業目線』を持った福祉施設の取り組みに対して大変共感を覚えました。
          NESTにおいても社長以下、職員全員が電機神奈川様のように一致団結して、その方針の下支援を実施していく必要性も強く感じました。

           兼ねてから感じていた、利用者の皆様に対して私たち施設職員が行うべき事は、『仕事を中心にした取り組み』であり、その取り組みによって皆様が人として成長される事は間違いの無い事実です。その取り組みの必要性を職員全員で共有する為に、遠藤社長は、『フジ化学に学べ』を合言葉に職員教育に当たってこられました。しかしながら、職員の数が増せば増すほど、共有する事が困難になり、その事が支援の障壁になり兼ねないという危機感を持つほどでした。

           その折、浜松のたちばな授産所様を訪問する機会を得た遠藤社長は、山下所長様の、職員の皆様へ御自身が習得されていらした、施設の方針となるべき事柄を丁寧に伝達されている姿勢に深く感銘致しました。
           
          仕事をこなした達成感や充実感を味わうという、所謂生きがい・やりがいを実感できる為には、心身の安定が不可欠です。それには生活リズムの安定が必要条件となって参ります。
          安定した生活リズムを組み立てる為には、利用者の皆様に提供できる仕事量を確保しなければなりません。
          その為には、お仕事を頂戴できる企業さんと、良好な信頼関係を築かなければならず、それをかなえる為に必要なのが、『企業目線』をもった『企業努力』であります。
          高品質の安定、納期の厳守こそがそれにあたります。

           上記事柄はフジ化学で遠藤社長が取り組まれてきたことに他ならず、それを職員全員に丁寧に説明する事によりNESTとしてのブレのない支援が確立できるのではと気付きました。
          施設方針を徹底する事によって得られた職員全員の高い取り組み意識は、利用者様への支援に正に投影されるものであり、非常に重要な意味をもつところだと考えます。
          施設内において、職員ごとに対応が異なってしまっては、支援を受ける利用者様の混乱の元となってしまいます。反対に職員全員が一丸となって高い意識の下で取り組んでいけば、それは利用者さんの確かな表れ(成長)に投影されます。

           NESTにおいては、これをかなえる為に、職員自らが治具の工夫や工程の工夫等の環境整備を実施する事によって利用者様の実績向上を図っております。 日々の取り組みの中で、利用者の皆様に、目標・評価の数値化を始め、手順の視覚支援化を図り、就労を継続していく為の習慣・意識付けを実施しております。
          分かり易い目標・実績・評価の提示により、利用者様たちの伸び代がどんどん増していく現状を私も何例も目の当たりにしております。

           また、実績の数値化・グラフ化等の視覚支援はいかにも適正な客観的な評価であり、ご自身の障害や課題の受容が困難な利用者様に対しても自身での振り返りを通じて、それ(受容)を促せる有効なツールになるのではと考えて取り組んでおります。

           このように支援させていただき、人としての成長を遂げた利用者様を少しでも多く、就労の場に羽ばたいていただくには、社会的な雇用の創出が必須であると感じております。
          NESTの取り組みとして、実は富士圏域の企業様から選りすぐった1500社の企業様宛に、障害者雇用に取り組んでいただくべくダイレクトメールを発信させていただいている最中でございます。
          残念ながら今のところレスポンスがございません。
          是非とも企業の皆様に関心を持っていただき、雇用の創出をお考えいただきたいものでございます。

           
           さて、当日講演の中で、お伝えしきれない事も数多くあり、また参加して下さった皆様の疑問や不安を解消させていただけなかったのではないかと反省しております。
           
           NESTにおいては常に皆様のご見学のご案内をさせていただいております。
          百聞は一見にしかずと申します。
          是非ともNESTにお越し下さい。実際に支援の現場を御覧いただき、ご質問・不安な点等をぶつけて下さい。
          誠心誠意お答えさせていただきます。
          また、企業の皆様にもお忙しい中、足をお運びいただきNESTの利用者様たちの力強さを感じて、企業様の貴重な戦力となるべき人材を発掘していただければと思います。

                                                                   上野

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